ファミリービジネスとその承継について
ファミリービジネスが発展し、よりよい承継を果たすお手伝いをしています。
ファミリービジネスは、家族が所有・経営する企業であり、その歴史は古く、世界中の経済において重要な役割を果たしてきました。
日本においても、老舗企業や中小企業の多くがファミリービジネスであり、地域経済や雇用を支える存在として注目されています。
ファミリービジネスの起業から承継までのライフサイクルに焦点を当て、ビジネスと家族との複雑な関係性について詳しく解説します。
1. ファミリービジネスのライフサイクル
ファミリービジネスは、一般的な企業のライフサイクルと同様に、以下の段階を経て成長・発展していきます。
・ 創業期:
家族の情熱やアイデアを基に事業が開始されます。
家族の結束力や信頼関係が強みとなります。
資金調達や人材確保など、多くの課題に直面します。
・ 成長期:
事業が軌道に乗り、売上や利益が拡大します。
組織の拡大や多角化が進み、経営体制の確立が求められます。
家族間の役割分担や権限委譲が課題となります。
・ 成熟期:
事業が安定し、一定の地位を確立します。
事業の維持・発展と並行して、承継計画の策定が重要となります。
世代交代に伴う経営方針や企業文化の変化が課題となります。
・ 承継期:
後継者への経営権の移譲が行われます。
円滑な承継のため、綿密な準備と計画が必要です。
家族間の合意形成や後継者の育成が課題となります。
・ 衰退期または再成長期:
時代の変化や競争激化に対応できず、事業が衰退する場合があります。
新たな事業展開や経営改革により、再成長を目指す場合もあります。
ファミリービジネスの変革は、家族の協力と理解が不可欠です。
2. ファミリービジネスにおけるビジネスと家族との関わり
ファミリービジネスでは、ビジネスと家族が密接に関わり合い、独特の強みと課題を生み出します。
・ 強み:
長期的な視点:短期的な利益よりも、長期的な事業の存続と発展を重視する傾向があります。
強い結束力:家族の絆が、困難な状況においても事業を支える原動力となります。
高い信頼性:顧客や取引先からの信頼を得やすく、良好な関係を築きやすいです。
企業文化の継承:創業者の理念や価値観が受け継がれやすく、独自の企業文化が形成されます。
・ 課題:
公私の混同:ビジネスとプライベートの区別が曖昧になり、家族間の対立や感情的な問題が生じやすいです。
後継者問題:親族内に適切な後継者がいない場合や、後継者選びで家族間の対立が生じる場合があります。
経営の硬直化:外部からの意見を取り入れにくく、経営が硬直化する場合があります。
親族間の利害対立:経営方針や資産配分などをめぐり、親族間で利害対立が起きる場合があります。
3. ファミリービジネスの承継
ファミリービジネスの承継は、事業の存続と発展を左右する重要なプロセスです。円滑な承継のためには、以下の点に留意する必要があります。
・早期からの準備:
後継者の選定や育成、経営権の移譲など、長期的な視点に立った計画が必要です。
・後継者の育成:
・経営に必要な知識やスキル、経験を身につけさせるための教育や研修が必要です。
・ 家族間の合意形成:
承継計画について、家族間で十分に話し合い、合意形成を図ることが重要です。
・ 専門家の活用:
弁護士や税理士、コンサルタントなど、専門家の意見やアドバイスを参考にすることも有効です。
・ 事業承継と親族間の相続との連動:
事業用資産と、親族の生活用資産との分離。
後継者とそれ以外の親族との公平な資産配分。
納税資金の確保。
4. ファミリービジネスの未来
グローバル化やデジタル化など、ビジネス環境が大きく変化する中で、ファミリービジネスも変革を迫られています。
・ 外部人材の活用:
経営の専門家や外部の視点を取り入れることで、経営の効率化やイノベーションを促進する必要があります。
・ 事業の多角化:
既存の事業に加えて、新たな事業領域への展開を検討することで、事業の持続性を高める必要があります。
・ デジタル技術の活用:
デジタル技術を活用することで、業務の効率化や顧客との関係強化を図る必要があります。
・ コーポレート・ガバナンスの強化:
経営の透明性を高め、ステークホルダーからの信頼を得ることが重要です。
ファミリービジネスは、家族の絆と事業の成長を両立させながら、持続可能な発展を目指す必要があります。
5. まとめ
ファミリービジネスは、家族とビジネスが複雑に絡み合う独特の存在であり、その強みと課題を理解し、適切な対策を講じることが重要です。特に、承継はファミリービジネスにとって最大の課題の一つであり、早期からの準備と計画、家族間の合意形成、専門家の活用などが不可欠です。
ファミリービジネスが時代の変化に対応し、持続的な成長を遂げるためには、外部人材の活用や事業の多角化、デジタル技術の活用など、新たな取り組みが求められます。また、コーポレート・ガバナンスの強化により、経営の透明性を高め、ステークホルダーからの信頼を得ることも重要です。
ファミリービジネスの承継場面での資産の分け方の考え方の基礎
スリーサークルモデルをベースに資産の承継を検討してまいりますが、
ではスリーサークルモデルとはというところのお話です。
事業承継は、単に経営権を後継者に譲るだけでなく、会社の資産を適切に引き継ぐことも重要な課題です。
特に、ファミリービジネスにおいては、「スリーサークルモデル」を視野に入れた資産承継の検討が不可欠です。
スリーサークルモデルとは
スリーサークルモデルとは、ファミリービジネスを
「所有(株主)」
「経営」
「家族」
の3つの要素が重なり合う円として捉える考え方です。
このモデルは、ファミリービジネスにおける複雑な人間関係や利害関係を整理し、事業承継を円滑に進めるためのフレームワークとして活用されます。
スリーサークルモデルと資産承継
スリーサークルモデルを考慮した資産承継では、以下の3つの円それぞれに関連する資産の承継を検討する必要があります。
・ 所有(株主)の円:株式の承継
会社の株式は、所有と経営を分離する上で重要な役割を果たします。
後継者に株式を承継する際には、相続税や贈与税などの税務上の影響を考慮する必要があります。
株式の分散を防ぎ、後継者の経営権を安定させるために、持株会社の設立や種類株式の活用なども検討されます。
・ 経営の円:事業用資産の承継
事業に必要な不動産、設備、知的財産などの事業用資産は、会社の継続的な成長に不可欠です。
これらの資産を後継者に承継する際には、事業の継続性を考慮し、適切な評価と承継方法を選択する必要があります。
事業承継税制の活用や、リースバックなどの手法も検討されます。
・ 家族の円:個人資産の承継
経営者の個人資産(不動産、預貯金、有価証券など)は、家族の生活基盤を支える重要な要素です。
これらの資産を家族間で公平に分配するために、遺言書の作成や家族信託の活用などが検討されます。
事業承継と家族の生活保障のバランスを考慮した、総合的な資産承継計画が求められます。
スリーサークルモデルを考慮した資産承継のポイント
・早期からの計画策定: 事業承継は長期的なプロセスであり、早期からの計画策定が重要です。
・専門家の活用: 税理士、弁護士、中小企業診断士などの専門家の助言を得ながら、計画を進めることが望ましいです。
・家族間のコミュニケーション: 家族間の合意形成は、円滑な事業承継に不可欠です。
・後継者の育成: 後継者の経営能力を高めるための教育や研修も重要な要素です。
スリーサークルモデルを活用することで、ファミリービジネスは、複雑な利害関係を整理し、円滑な事業承継を実現できます。
参考情報
* 中小企業庁:事業承継・引継ぎポータルサイト
* https://shoukei.smrj.go.jp/
承継する場面で気になる相続税について・・・
ファミリービジネスの承継に係る概念はとっても大切ですが、どうしても気になる相続税についての基礎を少しだけ。。。
日本の相続税は、故人(被相続人)から財産を受け継いだ相続人に課される税金です。
相続税の計算は複雑ですが、基本的な考え方と具体的な例を通して、解説しますね。
1. 相続税の基本的な考え方
相続税は、故人の遺産総額から基礎控除額を差し引いた課税遺産総額に対して課税されます。つまり、遺産総額が基礎控除額以下であれば、相続税は発生しません。
2. 相続税の計算ステップ
相続税の計算は、以下のステップで進めます。
・ ステップ1:相続財産の評価
現金、預貯金、不動産、有価証券など、すべての相続財産を評価します。
不動産の評価は、路線価方式や倍率方式など、専門的な知識が必要です。
・ ステップ2:債務・葬式費用の控除
故人の借金や葬式費用は、遺産総額から控除できます。
・ ステップ3:基礎控除額の計算
基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」で計算します。
・ ステップ4:課税遺産総額の計算
遺産総額から債務・葬式費用と基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を計算します。
・ ステップ5:法定相続分に応じた取得金額の計算
課税遺産総額を、民法で定められた法定相続分で各相続人に割り振ります。
・ ステップ6:相続税総額の計算
各相続人の取得金額に、相続税率を乗じて、相続税額を計算します。
相続税率は、取得金額に応じて10%から55%の累進課税となっています。
各相続人の相続税額を合計して、相続税の総額を計算します。
・ ステップ7:各相続人の納付税額の計算
相続税の総額を、各相続人の実際の取得割合に応じて割り振ります。
配偶者控除や未成年者控除などの税額控除がある場合は、控除後の金額が各相続人の納付税額となります。
3. 相続税の計算例
以下のケースを例に、相続税の計算をしてみましょう。
遺産総額:2億円
債務・葬式費用:1,000万円
法定相続人:配偶者と子供2人
計算:
相続財産の評価額-債務、葬儀費用=1億9,000万円
基礎控除額:3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円
課税遺産総額:1億9,000万円-4,800万円=1億4,200万円
法定相続分に応じた取得金額
配偶者:1億4,200万円×1/2=7,100万円
子供1人あたり:1億4,200万円×1/4=3,550万円
相続税額の計算
配偶者 7,100万円 x 30%-700万円=1,430万円
子供 3,550万円 x 20%-200万円=510万円
相続税総額 1,430万円+510万円+510万円=2,450万円
各相続人の納付税額
配偶者 2,450万円x1/2=1,225万円
それぞれ子供 2,450万円x1/4=612.5万円
4. 相続税の軽減措置
相続税には、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、様々な軽減措置があります。これらの軽減措置を適切に活用することで、相続税の負担を大幅に減らすことができます。
・ 配偶者の税額軽減
配偶者が取得した遺産のうち、1億6,000万円まで、または法定相続分相当額までは相続税が課税されません。
・ 小規模宅地等の特例
故人が住んでいた自宅や事業用に使っていた宅地を相続する場合、一定の要件を満たせば、評価額を最大80%減額できます。
・ 生命保険金の非課税枠
「500万円×法定相続人の数」で計算された金額までは非課税となります。
5. 相続税対策の重要性
相続税は高額になる場合があるため、生前から適切な対策を講じることが重要です。相続税対策には、以下のような方法があります。
・ 生前贈与
年間110万円までの贈与は非課税です。計画的に贈与を行うことで、相続財産を減らすことができます。
・ 生命保険の活用
生命保険金は、一定額まで非課税となるため、相続税対策に有効です。
・ 不動産の有効活用
不動産を賃貸住宅として活用することで、相続税評価額を下げることができます。
・ 遺言書の作成
遺言書を作成することで、相続財産の分割方法を指定し、相続人間の争いを防ぐことができます。
事業承継税制について
承継の場面で検討の余地のある事業承継税制についてお話いたします。
事業承継税制とは?
事業承継税制とは、中小企業における後継者への相続・贈与による事業承継を円滑化するための税制優遇措置です。
後継者が先代経営者から自社株式などを相続・贈与により取得した場合、一定の要件を満たすことで、相続税・贈与税の納税が猶予または免除されます。
事業承継税制のメリット
事業承継税制の主なメリットは、以下のとおりです。
・ 相続税・贈与税の納税猶予・免除: 後継者の税負担を大幅に軽減し、事業承継を円滑に進めることができます。
・ 事業資金の確保: 多額の税負担を回避することで、後継者は事業資金を確保し、事業の継続・発展に集中できます。
・後継者育成の促進: 税制優遇措置は、後継者となる者のモチベーションを高め、早期の育成を促します。
・ 雇用の維持: 事業承継が円滑に進むことで、従業員の雇用が守られ、地域経済の安定に貢献します。
事業承継税制のデメリット
一方で、事業承継税制には以下のようなデメリットも存在します。
・ 適用要件の複雑さ: 税制優遇を受けるためには、複雑な要件を満たす必要があります。
・ 継続的な報告義務: 納税猶予期間中は、税務署への定期的な報告義務が発生します。
・ 適用後の制約: 適用後も、事業の継続や株式の保有など、一定の制約が課されます。
・ 税制改正のリスク: 税制は将来的に改正される可能性があり、制度の変更によって予期せぬ税負担が発生するリスクがあります。
・ 後継者問題の解決にはならない:あくまで税制優遇であるため、後継者不足などの根本的な問題の解決にはなりません。
事業承継税制の適用要件
事業承継税制の適用を受けるためには、以下の主な要件を満たす必要があります。
会社に関する要件
・ 中小企業であること
・ 非上場会社であること
・ 従業員数が一定数以下であること
・ 特定の業種に該当しないこと
先代経営者に関する要件
・ 会社の代表者であったこと
・ 後継者に株式を贈与・相続すること
・ 贈与・相続後、会社の代表者でないこと
後継者に関する要件
・ 会社の代表者であること
・ 一定の要件を満たす親族であること
・ 株式を相続・贈与により取得すること
・ 5年間で従業員の8割を維持する。
その他
・ 都道府県知事の認定
・ 税務署への申告
事業承継税制の注意点
事業承継税制は、複雑な制度であり、適用要件も多岐にわたります。適用を検討する際には、慎重に判断することが重要です。
事業承継税制の今後の展望
事業承継税制は、中小企業の事業承継を促進するために、今後も改正が検討される可能性があります。税制改正の動向に注意し、常に最新の情報を把握しておくことが重要です。
参考情報
* 国税庁 事業承継税制特集: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/jigyo-shokei/index.htm
上記の情報は、2025年4月3日現在の相続税法に基づいています。税制は頻繁に改正されるため、最新の情報については、国税庁のウェブサイトや税理士などの専門家にご確認ください。
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